はいどうもこんにちは! 20代怠け者(@20sInvest)です。
米国企業の株主第一主義が終了!
…という趣旨のニュースが飛び交っています。
「株主第一主義が終了」という見出しばかりが目立っているので、「米国株へ投資するメリットがなくなるのではないか」「安定配当が受けられなくなるのではないか」というような懸念を持つ方も多いようです。
まあ、当たり前といえば当たり前か…。
ぼく自身もこの提言の原文を読んでみましたが、感想と結論としては「これからも株主への還元はしっかりやっていく」「今までと大して変わらない」という印象を受けました。
未来はわからないけど、それほど過敏になって心配するような話ではないな、という感じです。
少なくとも、本文に大して、無駄に不安を煽るような見出しだと感じましたね。
実際の本文を少し日本語訳しながら、そう感じた理由を解説していきます。
目次
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【原文】提言のソースと本文はこちら
さて、今回の話題の提言は米国企業の経済団体「ビジネス・ラウンドテーブル」が2019年8月18日に発表した「Statement on the Purpose of a Corporation」という提言です。
タイトルを日本語に訳すと「企業の目的に関する声明」といったところでしょうか。
原文、およびソースはこちらです。
Statement on the Purpose of a Corporation
Americans deserve an economy that allows each person to succeed through hard work and creativity and to lead a life of meaning and dignity. We believe the free-market system is the best means of generating good jobs, a strong and sustainable economy, innovation, a healthy environment and economic opportunity for all.
Businesses play a vital role in the economy by creating jobs, fostering innovation and providing essential goods and services. Businesses make and sell consumer products; manufacture equipment and vehicles; support the national defense; grow and produce food; provide health care; generate and deliver energy; and offer financial, communications and other services that underpin economic growth.
While each of our individual companies serves its own corporate purpose, we share a fundamental commitment to all of our stakeholders. We commit to:
- Delivering value to our customers. We will further the tradition of American companies leading the way in meeting or exceeding customer expectations.
- Investing in our employees. This starts with compensating them fairly and providing important benefits. It also includes supporting them through training and education that help develop new skills for a rapidly changing world. We foster diversity and inclusion, dignity and respect.
- Dealing fairly and ethically with our suppliers. We are dedicated to serving as good partners to the other companies, large and small, that help us meet our missions.
- Supporting the communities in which we work. We respect the people in our communities and protect the environment by embracing sustainable practices across our businesses.
- Generating long-term value for shareholders, who provide the capital that allows companies to invest, grow and innovate. We are committed to transparency and effective engagement with shareholders.
Each of our stakeholders is essential. We commit to deliver value to all of them, for the future success of our companies, our communities and our country.
August 2019
【意訳】日本語で読むとこんな感じ
ざっくりとですが、日本語に直して要点をまとめると、このようなことを提言しています。
それぞれの企業はそれぞれの企業理念に沿って、すべての利害関係者(Stakeholder)に以下の通りお約束(Commit)します。
- 価値を顧客(Customer)に提供します。
- トレーニングや教育を通じて従業員(Employees)に投資します。
- フェアで倫理的な取引をサプライヤー(Suppliers)と行います。
- 地域社会(Communities)のサポートを行います。
- 長期間の利益を、株主(Stockholders)のために生み出します。
これらステークホルダーは、みな必要不可欠なものです。
我々は、これらすべてのステークホルダーに価値を提供することをお約束します。
【事実①】関係するすべての人達に利益を還元しますよ宣言
この提言の本文を見る限り、米国の企業に関係するすべての人に、価値・利益を提供します、といっています。
話している内容はとても単純なものですね。
- 米国企業は顧客・従業員・サプライヤー・地域社会・株主にそれぞれ貢献しますよ。
- これらすべての利害関係者を大事にしますよ。
【事実②】株主にも「長期的な利益」を生み出しますよ、という宣言
投資家には一番重要になる部分である、株主に対する提言の部分をもう少し詳しく見てみます。
該当する原文はこちら。
Generating long-term value for shareholders, who provide the capital that allows companies to invest, grow and innovate. We are committed to transparency and effective engagement with shareholders.
日本語訳するとこんな感じでしょうか。
我々は透明性と効果的な貢献を、株主にお約束します。
【感想】ぶっちゃけ、大きな変化はないのでは
結局の所、他のステークホルダーにも配慮しますよと宣言しつつ、株主に対しての姿勢が変わるわけではない、という印象を受けました。
ニュースでは「株主第一主義が終了!」というような書き方をしているので、「株主よりも他の利害関係者を優遇するというような提言」にも取れたのだけど、本文を読んでみた限りでは「どの利害関係者にも貢献しますよ」というスローガンをうたっているだけに過ぎません。
この利害関係者に「株主」が入っていないとなると話は変わってきますが、しっかり入っている上に「長期的な利益を生み出すことを株主に約束します」という文言も入っているので、一安心して良いかと思います。
少なくとも、長期投資家には安定配当を続けますよ、という提言にも取れます。
「そうは言っても、他の利害関係者にも貢献するなら株主は二の次になるのでは!?」
…と思う気持ちもあるでしょうが、これもちょっと違うように思います。
今までも宣言していた建前を、改めて言い直しただけ…というのがぼくの率直な印象です。
そもそもの話、地域社会への貢献といった企業の社会的責任(CSR活動)は以前から行われてました。
従業員にも福利厚生や教育というベネフィットはあったでしょうし、CSR活動の形で地域社会にも貢献していたわけで。
今まで株主以外のステークホルダーに全く配慮していなかった・無視していた、というわけではないですよね。
(ただ、サプライヤーについてはどうだろう、企業によってはあまり利益還元していない部分だったかもしれない。)
そもそも「株主第一主義」は結果的にそうなっていただけであって、わざわざ宣言してまで「我々は株主のためだけに働いている!」なんて言っていたわけでもないでしょうと。(笑)
こうした提言をしても、株式企業が株主のものであるルールは変わらない
何より、この提言受けていきなり「安定配当やめます・連続増配終了です」なんてやったところで、株価が暴落するのは目に見えていることですし、できるわけがない、というのが事実だと思います。
安定配当を停止すれば当然ながら株主は失望して売りに走りますので、株価は暴落、企業価値も大きく目減りします。
一方的に「株主第一主義はやめます!」と宣言したところで、「株式の保有数=企業の所有権」という株式企業のルールをなしている以上、どうしても最終的には「株式会社は株主のもの」となりますから。
この提言だけで、急に資本主義のルールがひっくり返った!みたいなことにはどう転んでもなりません。
ただし、わざわざこうした提言をしたのだから、長期的に見ても、少しずつ株主配当へのプライオリティは、下がっていくのかもしれません。
ぼくはあくまで一個人の投資家でしかないので、未来はどうなるかわからないです。
安定配当は維持するまでも、増配率は低くする…といった全体的な傾向ぐらいはありそうですね。
まあ、現時点でも増配率は10年前より確実に低くなってるんですけどね。
それよりも、株主第一主義でもなく、かといって従業員にも大きく貢献しているでもない日本企業の方が、大丈夫なのか?
という気持ちがありますけどね。(笑)
日本株はどっち付かずでフラフラしてるので、むしろ株主第一主義の方向にしっかり舵を切ったほうがいいんじゃないかとすら思います。